1937年にジョヴァンニ・フォンタナによって創業されたミラノブランド、ヴァレクストラ。ジョヴァンニはその独自の視点を活かして、アタッシュケースやリストバッグ、コインケースなど、働く人に欠かせないアイテムを洗練されたデザインと使いやすさを重視した機能性に富んだものへと進化させ、イタリアデザイン界でたちまち名を馳せた。
以来、今日まで続くヴァレクストラの魅力の一つである「美しさ」の秘密を探るため、現在ブランドのCEO(最高経営責任者)を務めるグザヴィエ・ルゥジョー氏にお話をうかがった。
グザヴィエさんは2021年より現職を務めてらっしゃいますが、ヴァレクストラとの最初の出会いを教えてください。
20代前半に初めてミラノを訪れたとき、ヴァレクストラを見つけ、すぐに魅了されました。このブランドの時代を超越したデザイン、純粋なライン、そして細部まで完璧に引き立てる素晴らしい職人技に惚れ込みました。それはまさに別格でした。
CEOに就任して最初に担当した仕事は何ですか?就任当時のラグジュアリー・ブランド業界の状況も含めて教えてください。
2021年にヴァレクストラのCEOに就任したとき、私にとって非常に重要だったのは、ブランドを支える人と彼らの仕事を知ることでした。ミラノのアトリエや本社だけでなく、世界中のブティック、小売パートナーに至るまで、社員から各部門のスタッフ、そして彼らの領域、役割、業務のプロセスを理解することに大半の時間を費やしました。ヴァレクストラの「可能性」を余すところなく発揮するため、私は一旦、外部とのコラボレーションを保留し、その間に世界中の同僚やチームと協力することに専念しました。
ヴァレクストラのコレクションを評価するいっぽう、革新の余地を見極め、歴史的遺産を取り入れ、さらなる成長を促すためのブランドブック(企業のビジョンや価値観を明確に示すもの)を構築しました。その後、私たちと価値観が一致する独立系職人や一流の建築家、一流のデザイン・スタジオと多くのコラボレーションを行いました。その結果、素晴らしいエンゲージメント(深い繋がり)と成功を収めることができました。一流のラグジュアリー・ブランドの最も重要な特質のひとつは「従うのではなく、強い信念をもってリードすること」だと私は信じています。
それらの中で、グザヴィエCEOが開発した最も挑戦的な新しい試みは何でしたか?
最も重要なマイルストーン(節目)は、ソフトな「ミルプンテ・レザー」を開発したことです。ヴァレクストラならではの素材のテクスチャーを維持しながら、新しい触感を提供するという挑戦でした。この革新的なレザーはメンズとレディースの両コレクションに応用でき、ブランドの新たな可能性を拡大し、多様な現代のライフスタイルに対応できる製品へと進化させました。
ミラノで発表された「ヴァレクストラ」2025年春夏コレクション。
ブランドが提唱している「エンジニアリング・ビューティー」とは何を意味しますか?
ヴァレクストラを設立したジョヴァンニ・フォンタナはエンジニア(技術者)としての視点に長けた人でした。「構造、機能、細部への揺るぎないこだわり」というレンズを通して、ラグジュアリーレザーグッズの創造に取り組んだのです。最高級のレザー、複雑に構成された金具、独自に調合されたカラーパレットを使用することで、工学的なオブジェは「美」を兼ね備えたオブジェとなりました。以来、私たちは機能性と美しさを兼ね備えたコレクションを定義する「エンジニアリング・ビューティー」をコンセプトに掲げています。
続きは本誌で…… モードェモードNo.409