説明
No.381の主なコンテンツ
9月7日のニューヨークに始まり、10月3日のパリ最終日まで約1か月の間に、世界4大都市にて18年春夏コレクションが開催されました。モードェモードNo.381では、各都市選りすぐりの約100ブランドをご紹介しています。
(表紙:ルイ・ヴィトン)
◆2018春夏トレンドエクスプレス
今季は大自然の美しさやダイナミズムがひとつのインスピレーションに。雨上がりのきらきらした空気や、水の透明感、羽のような軽やかさと、風をはらんだやさしいシルエットが主流に。
◆2018年春夏パリ プレタポルテ コレクション
今季のパリは通常より少し早い9月25日夜に始まり、10月3日夜までに83ブランドが公式にショーを開催。それ以外にも多数のブランドが展示会などで新作を発表しました。今季もいくつかの主要なメゾンでデザイナー交替が。ジバンシィは前クロエのクレア・ワイト・ケラー、ランバンはベテランのオートクチュリエ、オリヴィエ・ラピドゥス、クロエは元ニコラ・ジェスキエールのアシスタントだった新人ナターシャ・ラムゼイ・レヴィをそれぞれ迎え、新しい一歩を踏み出しました。開幕に先立つ9月8日には、フランスモード界の重鎮で、国民的存在でもあるピエール・ベルジェ氏が86歳で死去。メゾンの創業者である彼に追悼の念を込め、夜ライトアップしたエッフェル塔のふもとに巨大な野外ステージを特設して行なわれたサンローランのショーは、今季のハイライトのひとつになりました。
シャネルは本物の水を使った巨大な滝と渓谷のセット、セリーヌは白いテントを想わせる会場で新作を披露し、ヴァレンティノは月の輝きを透明のスパンコールで表現するなど、「自然への賛美」を表現。いっぽうで「パリっぽさ」も重要なファクターに。エッフェル塔を背景にしたサンローラン以外に、オリヴィエ・ルスタン率いるバルマンは仏国立パリ・オペラ座バレエ団の本拠地であるガルニエ宮のフォワイエで、オートクチュール級の豪華なコレクションを披露。ルイ・ヴィトンは会場となったルーブル美術館にふさわしい、ルイ15世紀時代のフレンチエレガンスを現代に蘇らせて、パリを代表するブランドとしての誇り高さを感じさせました。
スポーツテイストや自然に注目が集まる中で、ディオールのマリア・グラツィア・キウリは「フェミニニティ(女性性)」を重視しました。女性美術評論家リンダ・ノックリンによる「なぜ偉大な女性アーティストアーティストが生まれなかったか?それは、過去の美術書がすべて男性筆者による評論だったからではないか?」という言葉に、メゾン・ディオール初の女性デザイナーとして大いに勇気づけられたのでしょう。70年代のムードをデニムやニットのルックで表現しました。
ほかにも、パリコレから個性豊かな41ブランドをご紹介。新旧7名の日本人デザイナーにも注目です。
◆2018春夏ロンドン・ファッション・ウィーク
9月15日から19日まで5日間に開催されたロンドン・ファッション・ウィーク。この秋冬に発売されたJWアンダーソン×ユニクロ、アーデム×H&Mのように、世界的ファストファッションブランドとのコラボを通して、ロンドンデザイナーの才能が今また新たに注目を浴びています。
JWアンダーソンはパリのロエベも手掛けて大人気のデザイナー。毎回、個性の強いデザインを発表しますが、今季は「イージー&エブリディウェア」をテーマにリアルクローズに少し近づいた印象です。メアリー・カトランズは「子供時代の思い出」をカラフルに、クリストファー・ケーンは「1940年代のハウスワイフ」を凝った素材で、それぞれ表現。アーデムは若き日のエリザベス女王の装いから想を得て、フィット&フレアのドレスやツインニットなどの“英国的お嬢様ルック”を発表しました。
欧州ブランドの間では否定的意見が強いSee Now Buy Now(ショーで見たものがすぐ買える)システムを今季も維持したのはバーバリー。アイコンのクラシックチェックやトレンチコートを、新しい色と素材で刷新して新鮮なイメージを与えました。クリストファー・ベイリーはショーの翌月に辞意を表明し、次シーズンでバーバリー社を去ることが決定しています。ベイリーのラストコレクションと今後のブランドの行方に大きな注目が集まっています。
今季はニューヨークからアメリカンカジュアルを代表するブランド、トミー・ヒルフィガーが参戦して話題を呼びました。一般客も含む約2千人が集まった会場に、人気モデルでブランドアンバサダーのジジ・ハディッドが新作を着て登場すると、場内から大きな歓声が沸きました。ショーの後、アメリカの人気DJデュオ、ザ・チェインスモーカーズによるシークレットライブも行われるなど、ロンドン・ファッション・ウィークのトリを飾るにふさわしい華やかな一夜を提供しました。
◆2018年春夏ミラノコレクション
9月20日から25日までの6日間に開催されたミラノコレクション。プラダのミウッチャ・プラダは「女性が描く女性のストーリー」をテーマに、日本のオノ・ナツメを含む9名の女性イラストレーターの作品を、壁に、服の上に、コラージュして女性への賛美を表現しました。ボッテガ・ヴェネタは春夏らしい淡いパステルカーを基調に、女性らしさをさわやかに表現。新デザイナーを迎えたジル・サンダーや、英国人歌手エルトン・ジョンとコラボしたグッチも注目を集めました。
なかでも、今季一番の話題をさらったのは、ドナテッラ・ヴェルサーチによる「ジャンニ・ヴェルサーチへ捧げる」と題したコレクションでした。1980年代から90年代にかけ、世界的ブームを巻き起こしたブランドの創始者ジャンニがフロリダで銃弾に倒れて今年で20年。その間、妹のドナテッラは、兄の遺した偉大なスタイルを継承しながらブランドの地位を誇り高く守ってきました。イタリアンバロックやギリシャ神話の古代モチーフから、アンディ・ウォーホルやリチャード・アヴェドンら近代アートにまで造形の深さを示した、華麗なる往年のヴェルサーチスタイルを、若干16歳の新人モデル、カイア・ガーバーを始めとする現代のトップモデル達が着こなして新鮮に蘇らせました。ラストシーンでは、サプライズゲストとして90年代のスーパーモデル5人(シンディ・クロフォード、クラウディア・シファー、カルラ・ブルーニ、ナオミ・キャンベル、ヘレナ・クリステンセン)がゴールドのドレスを着て舞台に現われると、スタンディングオベーションの嵐が巻き起こりました。
◆18年春夏ニューヨーク・コレクション
アルトゥザラ、プロエンツァ・スクーラー、ロダルテ、トム・ブラウンと、人気の4ブランドがパリへ発表の場を移したため、今季のニューヨークはいつもより少し寂しい印象が全体に漂いました。そんな中、ラフ・シモンズとピーター・ミュリエのベルギー2人組が手掛けるカルバン・クラインは「シネマ」「ポップアート」のアメリカ文化をヨーロッパ的発想で表現し、好評を博しました。アンディ・ウォーホル財団とのコラボで、若き日のデニス・ホッパーのポートレートや、著名な“電気椅子”をモチーフにした作品などを、白いレースや透明のPVCの上にプリントで再現するなど、ユニークな感性を見せました。
コレクションのトップを飾った大御所トム・フォードは、端正なカッティングのテーラードに、スポーティ&スラウチな感覚を加えて、新たなモダニズムを追求しました。毎シーズン、テーマをがらりと変えて、マルチな才能を見せるマーク・ジェイコブスは、ゆったりしたシルエットのスポーツウェアを、特別感のあるジャカード素材、インスタ映えしそうな鮮やかカラーで見せました。モデルの頭には服とコーディネートしたターバンを巻いて、注目を集めました。トリー・バーチはクーパー・ヒューイット美術館の美しい中庭で新作を披露して、初夏の気分を伝えました。
◆特集:「時」を刻むマックスマーラのコート
イタリアを代表するブランド、マックスマーラ。この秋には韓国・ソウルで初の回顧展を開催するなど、今その真価を再評価する動きがアジア各地で高まっています。アジア他国を先んじて1980年代に上陸した日本では、マックスマーラの代名詞“キャメルのコート”は知的なキャリアウーマンの必需品として名実ともに定着しています。今号では、マックスマーラの創業から60年余の歴史を貴重な資料とともに改めてご紹介。創業家の血を引くブランドアンバサダー、マリア・ジュリア・マラモッティや、ソウル出身でファッションニスタとして話題のデジタルインフルエンサー、アイリーン・キムへのインタビューも加えながら、過去をふりかえるだけでなく、現代のマックスマーラの魅力にも迫ります。
◆創作60年。インタビュー、ヒロココシノ
今年でめでたく御年80歳を迎えた日本を代表するデザイナーのひとり、コシノヒロコさん。幼い頃から絵を描くのが得意で、高校卒業と同時に上京、東京・文化服装学院在学中にはファッションコンテストのグランプリを獲得してプロへの道を開くなど、若い頃から特異な才能をいかんなく発揮してらっしゃいました。70年代末にはローマのアルタモーダ、80年代にはパリのプレタポルテと、順調に海外進出を果たしながら、日本でしっかりと地盤固めをし、今では後に続く若い世代のメンターとなっています。デビューから60年、一度たりとも休むことなくコレクションを発表し続けてきたコシノさんに改めてインタビュー。新作コレクションや趣味の絵画、また12月に発行される集大成本についてなど、創作の歴史を彩る貴重なお話をうかがいました。
他にも、パリコレ会場に集まるファッショニスタ達の着こなしからリアルなトレンドを分析する「オフ・ザ・ランウェイ リポート」など、コレクションやデザイナーにまつわる情報を豊富なヴィジュアルと共にお届けする、充実の1冊です。
(No.381、2018年1月号(冬号)、188ページ、オールカラー、1,440円・税込み)
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