説明
377号の主なコンテンツ
(表紙:シャネル)
◆2017春夏トレンド エクスプレス
数シーズン続いたスポーティやアスレジャーのトレンドが徐々に落ち着きを見せ始め、今シーズンはプリーツやパフスリーブ、ドレープの女性らしいテイストが戻ってきました。左右非対称のアシメトリーデザインや、素材の透け感を活かした重ね着スタイルも広がっています。
◆17春夏パリ プレタポルテ コレクション
パリの大手メゾン数社では今シーズンもデザイナー交替による新陳代謝が見られました。36歳のベルギー人、アンソニー・ヴァカレロを大抜擢したイヴ・サンローランは、黒を基調にシースルーやスモーキングなど、ムッシュ・サンローラン時代の象徴的なスタイルを、ストリート感覚いっぱいに新鮮に蘇らせ、好評を博しました。
かつてヴァレンティノの再生に大きく寄与したマリア・グラツィア・キウリは、その腕を買われてパリの名門クリスチャン・ディオールで今季から新たなスタートを切りました。白のコットンやチュールを多用した、ナチュラルで清潔感あふれるコレクションは、少し控えめではありましたが、今後の飛躍を充分に予感させるものがありました。
彼女の片腕であったピエールパオロ・ピッチョーリはヴァレンティノに残り、今季からソロでメゾンの全ラインを牽引。エレガントな路線はそのままに、ホットピンクにポピーレッドなどファンキーな色の組み合わせで、刺繍やレースのクラシカルなドレスを現代的に見せました。
元ニコラ・ジェスキエールの右腕だったブシュラ・ジャラールを起用したランバンは、女性デザイナーによる視点ならではのリアルな装いを提案。マニッシュなパンツスーツも、ランバンらしい柔らかなラインで表現され、コーディネートを楽しむための実用的なアイテムを充実させて、イメージを一新しました。
◆17春夏ミラノ ドンナ コレクション
今季は会期終了から数週間後に、ロベルト・カヴァリのデザイナー、ピーター・デュンダスと、マルニのコンスエロ・カスティリオーニが、それぞれ電撃的に辞任を発表し、業界内を騒然とさせました。まだまだオーナー企業の多いミラノでは、デザイナー交替劇はパリほど盛んではありませんでしたが、カヴァリもマルニも、数年前から経営権が創業家の手から離れており、そのひずみがここに来て出たようです。近年、デザイナー交替で成功したブランドといえばグッチ。今季もアレッサンドロ・ミケーレのエキセントリックなテイストが、メゾン伝統のクラフツマンシップと融合して、独自の世界観を提唱しました。ボッテガ・ヴェネタはメンズと初の合同ショーを開催し、創業50周年とトーマス・マイヤーの就任15周年をダブルでお祝いしました。
◆17春夏ロンドン ファッション ウィーク
国民投票によるEU離脱が決定したことで、これまでモノ・ヒトともに輸出入に頼っていた英国のファッション業界は今、大きな転換期を迎えています。ロンドンの筆頭ブランドとして長年コレクションシーンを盛り上げてきたバーバリー プローサムは、ニューヨークで話題のSee Now Buy Now(ショーで見た物がすぐ買える)運動に今季、本格的に取り組みました。ピカデリーサーカス地区にある巨大な本店にVIP顧客を招待し、ショーのライブ中継を実施、終了後には店内で新作を即販売して、コレクションとエンドユーザーとの距離をぐんと縮める試みです。英国を代表するブランドの今後のゆくえに目が離せません。一方で、JWアンダーソンやメアリー・カトランズら、自由な発想で個性を競い合うデザイナー達はクリエーションにさらに磨きをかけ、他都市のトップブランドに並ぶ実力を見せました。
◆17春夏ニューヨーク コレクション
先シーズン、世界的に大きな話題となったSee Now Buy Now(ショーで見た物がすぐ買える)運動。セールの時期以外は売り上げ不振が続くニューヨークのファッション業界あげての、消費活性化を目指すこの試みは、今季も継続して行われました。ただ、デザイナーの間でも賛成派と反対派とに大きく分かれているのが現実です。賛成派の筆頭はマイケル・コース。コーチやアレキサンダー・ワンも、ショーで見せた一部の新作をブティックやウェブサイトで即販売しました。対する反対派もしくは慎重派は、マーク・ジェイコブスやトリー・バーチらクリエイティブを優先するブランド。コレクションをあくまで表現の場として貫くことで、かえって新作の価値が高まったとの声も聞こえました。
他にも、パリコレ会場に集まったエディターやモデルたちの着こなしから最新のトレンドを分析する「オフ・ザ・ランウェイ リポート」など、コレクションやデザイナーにまつわる情報を、豊富なヴィジュアルと共にお届けする、充実の1冊です。
(2016年11月21日発売、A4変型、188ページ・オールカラー、1,440円・税込)